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ジャカルタのふろしき。

新卒でインドネシアはジャカルタに流れ着いて2年。日々生活で感じたこと、海外から日本を見て 思ったことなどを綴るブログ。最近JKT48にハマったため、関連の話題多めでお送りしてます。

ジャカルタでMacBook Proをタクシーに忘れた話

ものをよく無くす。「小さい頃はテニスの試合の前の日であっても内職をした」という昔話をよくする倹約家の父にどれだけ怒られても治らなかった。自分でも病気だと思っていた。ところが不思議と無くしたものが手元に帰ってくることもあり、ある一件からその癖を修正して物をなくさなくなった。

インドネシアに住んで1年ほど経ったある日の話。
土、日、月とほぼ寝ないで作業に追われていたある日、出先からオフィスまでタクシーに乗り、つかの間の眠りについた。オフィスに戻り、作業を始めようとしてたとき、大きな違和感に襲われた。

、、、。

パソコンが無い。

MacBook Proをタクシーに置き忘れたことに気づいたのだ。一瞬頭の中が真っ白になった。情報を一元管理していたため、インドネシアに住んで一年強のほぼすべてを失うことを意味する。

タクシー会社に電話してGPSで探すようお願いはしたものの、ここは日本ではない。
携帯電話を一年に二度無くした(そのうち一回は泥酔してレストランに置き忘れ、一回はすられた)経験から、もう手元に戻ってくることはないとあきらめ、代替機の購入のためのやりくりや、バックアップしなかった情報のリカバーを考え始めた、、、が、考え始めつつも心のどこかで戻ってくることを期待していた。

その日追われていた作業は会社のパソコンでできるため、とりあえず作業を進めていると携帯電話が鳴った。

知らない番号だった。こんなときに誰だよ、めんどくさいなあ、と思いつつ電話をとると、「森さんですか?」と英語で尋ねられた。知らない男だ。留学経験のはなさそうだけど、、しっかり勉強した跡が見えるインドネシア人の発音。

若々しい声だった。30代半ばだろうか。そうだと答えると、「タクシーであなたのMacBookを拾ったので電話しました。今どちらにいらっしゃいますか?」とひどく丁寧に尋ねられたのでオフィスの場所を答えた。

すると、なんとオフィスまで届けてくれると言う。さらに驚いたのは「身分証明書を用意してほしい。あなたが本当の持ち主かを確かめたい」と最後に付け加えたことだった。やけに手際がいい。

30分ほどオフィスビルのロビーで待っていると、ぼくがMacBook Proを置き忘れたタクシーと同じ車種の車が止まり、ドアが開いた。中から出てきたのは、背丈は170センチほど、奇麗にアイロンのかけられた白いシャツとグレーのスラックス、ピカピカの黒い革靴という身なりの男性だった。

「あなたが森さんですか」と訪ねられたので、そうだと答えた。まず、初めまして、と手を差し出してきたので握手をした。彼は自分の名前を名乗った後に、ラップトップの持ち主かどうか確かめるために、身分証を見せてもらえないかというので、その後にパスポートを手渡した。すると名前と顔写真の部分を見た後に僕の顔を見て「疑う訳ではないのだけれど、念のため確認をしたかっただけだ」といい気遣う姿勢を見せながらラップトップを僕に手渡した。

このときは作業に追われたいたため、一時的にパスワードを外していたのが功を奏した。ぼくがタクシーからおりた後に乗った彼は、パスワードがかかっていないことを知り、持ち主の情報を調べたところ、名前や電話番号を知り電話したとのこと。

パスワードがかかっていないとはいえ、妙に手際がいいと訝しんでいたら、彼の職業が大手携帯電話キャリア会社であることがわかった。通りで機器や情報の扱いに慣れている訳だ。少し世間話をしたところ、出自がお金持ちという訳ではないが、有名大学を出て有名企業に就職したエリートだった。いわゆる中間層に成り上がった層のひとりだ。

ぼくは彼にお礼をいい、オフィスまでにかかったタクシー代を払いたいと言うと、きっぱりと固辞された。そういうわけにはいかない、と少しやり取りをしていると、彼が「わかった、じゃああの運転手にあげてくれ。」と謎の解決策を提示してきて、引き下がるわけもいかないので、運転手にその代金を支払った。運転手はなんだかわからないが金がもらえてラッキーという顔をしていた。

最後に、ぜひお礼がしたいのでそのうちランチに行こう、と彼の電話番号を教えてもらった。感謝の気持ちが大きいのはもちろんだったが、世の中こんなにうまくいくものか?と少しだけ疑問を抱いた。念のため、ほんの少しだけだが、情報抜き取られてないかとか細工されてないかみたいな疑惑もあった。すんなり電話番号を教えてくれたので、ほんの少しでも恩人を疑ったことを恥じ、翌週にランチの約束をし、彼が去るのを見送った。

血の気が引く思いは今後もあまりしたくないので、このときから、常に持っている鞄の中でものを入れる場所を決めた。携帯電話はここ、鍵はここ、ラップトップはここというような感じで。自室でも、会社でも、出先でも。たったそれだけの習慣付けだったが、その後ものを無くしていない。たったこれだけのことをなぜ今までできなかったのか不思議だ。

あと、日本以外でものをどこかに置き忘れると100%戻ってこない、と思っていたけど。インドネシアでも特にお金に困っていない道徳的な人はいて、国民の所得が上がるにつれてそういう人も増えていくのかも。この一件はその象徴かもなと思った。最低限の所得がないと道徳もへったくれも無いし。

まあ、とりあえずめっちゃ運がよかった、助かった、という話。