ジャカルタのふろしき。

新卒でインドネシアはジャカルタに流れ着いて2年。日々生活で感じたこと、海外から日本を見て 思ったことなどを綴るブログ。最近JKT48にハマったため、関連の話題多めでお送りしてます。

海外では「年齢を尋ねるのは失礼」なのではなく「年齢を尋ねる理由がない」

「海外では○○なのに日本では××」などと得意げに語る人が時々いる。そういった話の中で頻出話題の一つであるのが、エントリの題名でもある「海外では年齢を訪ねるのは失礼に当たる」だ。「相手の年齢を訪ねたがるのは日本人の悪いくせ」という話が付け加えられるパターンが多い。

端的に言うと、国籍問わず年齢を尋ねてくる人は存在する。欧米、アジア、中国、中東、アフリカなど、各大陸出身の人と話したことがあるけれど、人によるとしか言えない。どの文化圏であっても、あまり趣味のいい言動とはいえないので、日本人だけが持っている悪い癖というわけではない。
ただ、その中でも日本人は年齢を尋ねたがる傾向は強いというのは事実である、というのが個人的な結論。それには大きな理由がある。

日本人はなぜ年齢を尋ねたがるのか。

その理由として、日本が「年齢がわかれば、相手のことがだいたいわかる」社会であることが挙げられる。年齢が分かれば、ある程度の社会的地位や所得などの身分を類推できるのだ。年齢と身分情報の相関性が強いのだと思う。義務教育が完備されている。年齢が分かればどんな教育を受けて、どんな価値観をもっているのかがわかる。格差がそこまで大きくない。

「海外で年齢を尋ねるのは失礼」というよりも、正確に言うと「年齢を尋ねる理由がない」ということになる。年齢から得られる副次的な情報が少ないためだ。

日本という国は、世界的に見て補足率の極めて高い、義務初等、中等教育により、国民のほとんどがある程度の教養を持ち合わせている、希有な国だ。均質な教育が施されているという前提が成立する状況下では、国全体で一定の「常識」が共有できる場合がある。受ける教育が均等であるため、価値観の違いは「世代間によるギャップ」が一番大きく認識される傾向が強い。

さらにここ40年ほどの間、日本では年功賃金性が主流であったため、年齢は所得を判断するための大きな判断材料にもなる。
日本人が初対面で相手の年齢を知りたがるのはこのためだ。年齢というファクターが、相手のアイデンティティや価値観を判断するために、ある程度重要なのだ。

ところが、世界中で200近くある国のうちのほとんどでは、社会階層ごとに生活環境が圧倒的に異なるため、国全体で共有できる常識なんてありえないわけである。そのため、年齢というファクターは、相手のアイデンティティや考えを予想するヒントにはなり得ないのだ。

社会階層や所得層によって、常識はまるで違うものになる。例えば同じ50歳でも、そこそこの規模の企業でホワイトカラー職を30年勤めてきた人、会社を経営している人、きわめて低賃金な職に就いている人、物乞いなど、、、

相手が50歳だからといって、階級によっては話が全く通じない場合があるのだ。
極端な話、物乞いの人にビジネス習慣の常識が通じるはずもない。

3年ほど前に、内閣府主催の国際交流事業、世界青年の船に参加し、世界各大陸からの、計13カ国の参加者と共同生活をした。二ヶ月弱一緒に生活して、年齢を尋ねて驚くことが多々あった。とても大人びている人でも実は年下だったり、とても子供っぽいのに10歳くらい年上だったり。見た目で判断できないことが多かった。そして、事業が終わってから参加者名簿を眺めていて気づいたことがある。仲良くなって今でも連絡を取り合う人は多いけど、年齢を知らないまま友達付き合いをしていたのだ。これはまさに「年齢を尋ねる理由がな」かったことに起因している。宗教観や恋愛観、結婚観、仕事観などの内面的な話をしたきわめて仲のいい相手の年齢をFacebookで知ったこともあった。相手の価値観やキャラクターを知る必要はあっても、年齢を知る必要にせまられることがほとんどなかった。

世界全体の人口で見ると、年収300万以上という数字は上位2%の数字である。日本を見てみると、人口の70%が年収300万円を超える。日本国民の7割が世界全体の上位2%なのだ。それをふまえて日本社会を見渡してみると、社会階層の多様さという点では、きわめて均質的であるといえる。あとは年齢さえ聞けばあるていど相手の情報がわかる、なんて簡単な社会構造なのだろうか。

結論をいうと、「海外では年齢を訪ねるのは失礼」という状況も勿論あるが、何より「年齢を尋ねること」に何の意味もないのだ。


完全に蛇足だけど、恋愛においてもそう。「年上の人の方がタイプ。だってしっかりしてるんだもん。」という言葉は日本以外では何の意味も持たない。社会階層が全然違えば、年上だからといってしっかりしてる担保にはなり得ない。

文化によって、話し相手の価値観を知るために重要なファクターは違う。異文化の人と会う可能性がある場合は、事前に最低限の知識は身につけておきたい。

蛇足2つめ。ちなみにインドネシアでまず聞くべきなのは「宗教」だ。相手によって何が失礼に当たるかが違うし、ただ一緒に食事をするにしても、店選びに気を使う。まあ見た目でもわかるので、身なりでの判断は重要。外見から人を判断することの是非について、また別のエントリをアップします。

◆年収を入力すると自分が世界人口の中で、何番目なのかが見えるサイト
http://www.globalrichlist.com/
年収を入力すると、世界人口のうち上位何パーセントあたりにいるのかが分かる

◆参考にしたデータ
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa06/2-1.html
厚生労働省:平成18年 国民生活基礎調査の概況 
図7 所得金額階級別世帯数の相対度数分布

五年前のデータだから変わってると思うけど、とりあえず参考にした数字。